放課後の小学校は、昼間の賑わいが嘘のように静かだった。夕暮れの光が教室の窓から斜めに差し込み、床に伸びる長い影を作っていた。
「もう行くよ!皆隠れて!」
かくれんぼの鬼に選ばれた真希が、教室の黒板に向かって両手で目を覆い、大きな声でカウントを始めた。
「いーち、にーい、さーん…」
私は急いで廊下に飛び出した。最上階の音楽室なら誰も来ないだろうと考えていた。静かに階段を上り、誰にも見られないように身を屈めて進んだ。
音楽室のドアを開けると、薄暗い室内にピアノが一台、何かを待ち構えるように佇んでいた。私はピアノの陰に隠れることにした。
「…じゅうきゅう、にじゅう!もう、いーい?」
真希の声が遠くから響いてくるのが聞こえた。これでしばらく安全だ。
時間が過ぎていくにつれて、外の空はどんどん暗くなっていった。音楽室の窓からは、校庭に延びる木々の影が見える。風が吹くたびに枝が揺れ、壁に不気味な影を映し出していた。
「見つけた!」
突然、廊下から聞こえる声に私は息を潜めた。でも、その声は下の階から聞こえてきたようだ。誰かが見つかったんだろう。
それから10分ほど経っただろうか。音楽室のドアがゆっくりと開く音がした。真希が来たのかと思ったが、入ってきたのは誰もいないようだった。ドアは風で開いたのかもしれない。
「ねえ、一緒に遊ぼう」
小さな声が聞こえた気がした。私は思わず体を硬くした。想像の声だろうか。
「ここにいるの?」
今度ははっきりと聞こえた。女の子の声だった。でも、教室には誰もいない。
「見つけた」
声は私のすぐ後ろから聞こえた。振り向くと、そこには誰もいなかった。ピアノの影が少し動いたような気がしただけだ。
急に寒くなった。夕日は完全に沈み、教室は薄暗くなっていた。早く見つかった方がいいかもしれない。私はピアノの陰から出ようとした。
「まだ帰っちゃダメ」
再び声が聞こえた。今度は複数の声のようだった。教室の隅々から、子供たちの囁き声が響いてくる。
「一緒に遊ぼう、永遠に」
私は恐怖で動けなくなった。窓の外を見ると、校庭には真希たちの姿があった。皆が校門から出て行くのが見えた。
「もう終わりだよ!明日また遊ぼう!」と真希が叫んでいる。
どうして?まだ私は見つかっていないのに。私を忘れたの?
「彼らは忘れたんだよ」背後から声がした。「みんなそうやって忘れていく」
振り向くと、薄暗い教室に子供たちの影が浮かび上がっていた。輪になって、かくれんぼをしているようだった。
「さあ、今度はあなたが鬼だよ」
私は叫ぼうとしたが、声が出なかった。音楽室のドアがゆっくりと閉まり、鍵がかかる音がした。
「いーち、にーい、さーん…」
子供たちの声が教室中に響き渡る。私は彼らの輪の中にいた。そして気づいた——私はもう長い間、この学校から出られていないことを。
今度は私が鬼になる番だった。永遠に続く、終わらないかくれんぼの。