家の中で– category –
家の中であった怖い話
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再生してはいけない
美咲がそのハンディカムを見つけたのは、進学費用を稼ぐためにアルバイトに明け暮れる忙しい日々の中だった。フリマアプリで「Sony製 ハンディカム 動作確認済み 格安」という商品を見つけた時、値段の安さに目を疑った。定価の十分の一以下。説明文には「... -
カーテンの向こう
真理が初めてそれに気づいたのは、秋の夜中だった。 午前三時頃、何かに呼び覚まされるように目を開けると、部屋の窓際で薄い水色のカーテンがゆっくりと揺れているのが見えた。窓は閉まっている。エアコンも止まっている。夜風が入り込む隙間もない。それ... -
子供部屋から聞こえる「おかえり
田中家が新築の家に引っ越してきたのは、桜の咲く頃だった。郊外の住宅地に建つ真新しい二階建ての家は、夫の健司と妻の美穂、そして五歳の娘である花音にとって念願のマイホームだった。共働きの夫婦にとって、健司の母親である祖母のタケ子が同居してく... -
誰にも渡さない
新しいアパートに引っ越してから一週間が経った。築四十年の古い木造二階建てだが、家賃の安さと駅からの近さに惹かれて決めた。前の住人が置いていった家具も使えるものばかりで、特に寝室にあった古いタンスは重厚感があって気に入っていた。 その日、掃... -
明日も雨でしょう。
毎晩午後十一時三十分、私は必ずテレビの天気予報を見る習慣があった。明日の服装を決めるためと、洗濯物を干すかどうかの判断材料にするためだ。一人暮らしを始めて三年、この習慣だけは欠かしたことがない。 気象予報士の田中美咲さんは、いつも穏やかな... -
誰が撮ったの?
麻衣子がそのことに気づいたのは、金曜日の夜だった。 残業で疲れ切って帰宅し、ベッドに倒れ込むようにして横になりながら、何気なくスマートフォンを開いた。友人から送られてきたメッセージに返事をしようと写真フォルダを開いたとき、見慣れない写真が... -
誰もいないはずの2階
夜の九時を回った頃、美月は居間のソファにもたれかかりながら、お気に入りのバラエティ番組を見ていた。両親は温泉旅行で明日の夜まで帰らない。高校二年生の美月にとって、こうした一人の時間は貴重だった。普段なら母親に「もう寝なさい」と言われる時... -
深夜2時に何度も来る配達員
最初にインターホンが鳴ったのは、三週間前の火曜日だった。 私は一人暮らしを始めて二年になる。新卒で入った会社の残業が多く、家に帰るのはいつも夜遅い。その日も午後十一時過ぎに帰宅し、シャワーを浴びてからパソコンで動画を見ていた。深夜二時を回... -
訪問者は母の声
深夜二時を回った頃だった。田中雅人は仕事から帰ってきて、缶ビールを片手にテレビを眺めていた。三十五歳の独身男性、両親を相次いで亡くしてから一人暮らしが長い。父は五年前に心筋梗塞で、母は昨年の春に癌で他界した。 母の死後、雅人は実家を売り払... -
冷蔵庫のメモ
麻衣が会社から疲れ切って帰宅したのは、いつものように夜の十時を回っていた。IT企業の事務職として働く彼女にとって、残業は日常茶飯事だった。二十六歳になったばかりの麻衣は、両親の反対を押し切って一人暮らしを始めてから三年が経つ。築十五年のマ...