家の中で– category –
家の中であった怖い話
-
亡き者からの手紙
最初の手紙が届いたのは、母の三回忌の日だった。 信じられないことだった。母の筆跡は間違いようがなく、私の名前「美咲」の「き」の字が少し傾いているのは、いつもの癖だった。宛名書きの角度、封筒の折り目の付け方、そして微かに漂うラベンダーの香り... -
最終電車の乗客
私が心底恐怖を感じたのは、あの深夜の電車の中だった。 仕事の飲み会が長引き、気づけば終電間際。何とか駅のホームに滑り込んだ私は、滑り込むように最終電車に乗り込んだ。車内は予想通り閑散としていた。サラリーマンが二、三人、酔った様子で座席に座... -
リモコンの場所
テレビのリモコンがない。 会社から帰宅して、いつもの習慣通りにソファに腰を下ろし、テレビをつけようとした瞬間、違和感に気づいた。サイドテーブルにあるはずのリモコンがそこにないのだ。 「あれ?」 疲れた頭で考える。今朝、ニュースを見ながら朝食... -
月曜日の家族
引っ越しから一週間が経った。 新しい生活を始めるために選んだのは、駅から徒歩15分ほどの静かな住宅街にある古いアパートだった。築年数は経っているが、内装はリフォーム済み。なによりも家賃が安く、一人暮らしにはぴったりだった。 「佐藤さん、こち... -
誰かが入れたコーヒー
週の真ん中だというのに、僕の仕事は終わりそうになかった。デザイナーとして働き始めて5年目になるが、今回のクライアントは特に難しい。何度修正しても「なんか違う」の一言で突き返される。締め切りは明日の午前中。もう深夜の1時を回っているというの... -
押し入れの音
私の部屋の押し入れから、最初に音が聞こえ始めたのは、引っ越してきてちょうど一週間が経った頃だった。 カサカサ。カサカサ。 何かが動く、微かな音。深夜、静寂に包まれた部屋の中で、その音だけが耳に残る。最初は気のせいかと思った。古いアパートだ... -
見えない来客
私が一人暮らしを始めたのは三月のことだった。東京郊外のマンションは築15年ほどだが、リフォーム済みで家賃も手頃だった。職場にも近いし、これ以上の物件は望めないと思った。 引っ越して最初の一週間は何もなかった。平凡で静かな日々。それがいつから... -
気配
寝室の天井を見つめながら、私は耳を澄ました。 またあの音だ。 微かな、かすかな、足音のような音。まるで誰かが絨毯の上を慎重に歩いているような音。でも、この家には私しかいないはずだ。 最初に気づいたのは三週間前、残業で疲れ果てて帰宅した夜だっ... -
おやすみの音
深夜二時。スマホの画面が青白く顔を照らす中、僕はSNSの投稿を眺めていた。明日は休日だからと、いつもより長く起きていたのだ。隣では妻が静かに寝息を立てている。 その時だった。 ピンポーン 玄関のチャイムが鳴った。 「こんな時間に…?」 僕は思わず... -
綴られる髪
昼下がり、私は二階の自室から一階へ降りようとしていた。家の中は静まり返っていて、家族は全員外出中だった。 窓から差し込む陽の光が廊下を明るく照らしていた。普段なら何の気にもならない光景だが、その日は何かが違った。廊下の床に黒い糸のようなも...
12