家の中で– category –
家の中であった怖い話
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誰にも渡さない
新しいアパートに引っ越してから一週間が経った。築四十年の古い木造二階建てだが、家賃の安さと駅からの近さに惹かれて決めた。前の住人が置いていった家具も使えるものばかりで、特に寝室にあった古いタンスは重厚感があって気に入っていた。 その日、掃... -
明日も雨でしょう。
毎晩午後十一時三十分、私は必ずテレビの天気予報を見る習慣があった。明日の服装を決めるためと、洗濯物を干すかどうかの判断材料にするためだ。一人暮らしを始めて三年、この習慣だけは欠かしたことがない。 気象予報士の田中美咲さんは、いつも穏やかな... -
誰が撮ったの?
麻衣子がそのことに気づいたのは、金曜日の夜だった。 残業で疲れ切って帰宅し、ベッドに倒れ込むようにして横になりながら、何気なくスマートフォンを開いた。友人から送られてきたメッセージに返事をしようと写真フォルダを開いたとき、見慣れない写真が... -
誰もいないはずの2階
夜の九時を回った頃、美月は居間のソファにもたれかかりながら、お気に入りのバラエティ番組を見ていた。両親は温泉旅行で明日の夜まで帰らない。高校二年生の美月にとって、こうした一人の時間は貴重だった。普段なら母親に「もう寝なさい」と言われる時... -
深夜2時に何度も来る配達員
最初にインターホンが鳴ったのは、三週間前の火曜日だった。 私は一人暮らしを始めて二年になる。新卒で入った会社の残業が多く、家に帰るのはいつも夜遅い。その日も午後十一時過ぎに帰宅し、シャワーを浴びてからパソコンで動画を見ていた。深夜二時を回... -
訪問者は母の声
深夜二時を回った頃だった。田中雅人は仕事から帰ってきて、缶ビールを片手にテレビを眺めていた。三十五歳の独身男性、両親を相次いで亡くしてから一人暮らしが長い。父は五年前に心筋梗塞で、母は昨年の春に癌で他界した。 母の死後、雅人は実家を売り払... -
冷蔵庫のメモ
麻衣が会社から疲れ切って帰宅したのは、いつものように夜の十時を回っていた。IT企業の事務職として働く彼女にとって、残業は日常茶飯事だった。二十六歳になったばかりの麻衣は、両親の反対を押し切って一人暮らしを始めてから三年が経つ。築十五年のマ... -
深夜のドアノック
私と拓也がアパートをシェアし始めてから、もう半年が経っていた。大学の近くにある築二十年のマンションで、家賃は安いが設備は古い。それでも二人で割れば負担は軽く、お互いの生活リズムも似ていたので、特に問題なく共同生活を送っていた。 その夜も、... -
包丁の音
夕方六時を過ぎると、我が家の台所からは決まって包丁の音が響く。母の手慣れた動きが奏でるトントントンという規則正しいリズムは、私にとって帰宅を告げる安らぎの音だった。 その日も同じだった。大学から帰宅した私は、玄関で靴を脱ぎながら台所の方向... -
視線の先に
八月の終わり、夜の熱気が肌にまとわりつく。エアコンの効きが悪くなった部屋から逃れるように、私はベランダに出て涼を求めていた。 時刻は午後十一時を回っている。この時間になると、向かいの七階建てマンションも大半の部屋が暗くなり、静寂が辺りを包...