家の中で– category –
家の中であった怖い話
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冷蔵庫のメモ
麻衣が会社から疲れ切って帰宅したのは、いつものように夜の十時を回っていた。IT企業の事務職として働く彼女にとって、残業は日常茶飯事だった。二十六歳になったばかりの麻衣は、両親の反対を押し切って一人暮らしを始めてから三年が経つ。築十五年のマ... -
深夜のドアノック
私と拓也がアパートをシェアし始めてから、もう半年が経っていた。大学の近くにある築二十年のマンションで、家賃は安いが設備は古い。それでも二人で割れば負担は軽く、お互いの生活リズムも似ていたので、特に問題なく共同生活を送っていた。 その夜も、... -
包丁の音
夕方六時を過ぎると、我が家の台所からは決まって包丁の音が響く。母の手慣れた動きが奏でるトントントンという規則正しいリズムは、私にとって帰宅を告げる安らぎの音だった。 その日も同じだった。大学から帰宅した私は、玄関で靴を脱ぎながら台所の方向... -
視線の先に
八月の終わり、夜の熱気が肌にまとわりつく。エアコンの効きが悪くなった部屋から逃れるように、私はベランダに出て涼を求めていた。 時刻は午後十一時を回っている。この時間になると、向かいの七階建てマンションも大半の部屋が暗くなり、静寂が辺りを包... -
消えた毛布
田中雄介は一人暮らしを始めてまだ半年だった。都内の1Kアパート、築20年ほどの古い建物だったが、家賃が安く、駅からも近いため迷わず決めた。隣人とのトラブルもなく、静かで住みやすい環境だと満足していた。 その夜も、いつものように午後11時頃にベッ... -
排水口の髪
田中美咲は、実家を出てから三年目のワンルームマンションで一人暮らしをしていた。築十五年の古いマンションだが、家賃が安く、職場からのアクセスも良い。唯一の不満は、お風呂の排水口がすぐに髪の毛で詰まってしまうことだった。 美咲は腰まで届く長い... -
亡き者からの手紙
最初の手紙が届いたのは、母の三回忌の日だった。 信じられないことだった。母の筆跡は間違いようがなく、私の名前「美咲」の「き」の字が少し傾いているのは、いつもの癖だった。宛名書きの角度、封筒の折り目の付け方、そして微かに漂うラベンダーの香り... -
最終電車の乗客
私が心底恐怖を感じたのは、あの深夜の電車の中だった。 仕事の飲み会が長引き、気づけば終電間際。何とか駅のホームに滑り込んだ私は、滑り込むように最終電車に乗り込んだ。車内は予想通り閑散としていた。サラリーマンが二、三人、酔った様子で座席に座... -
リモコンの場所
テレビのリモコンがない。 会社から帰宅して、いつもの習慣通りにソファに腰を下ろし、テレビをつけようとした瞬間、違和感に気づいた。サイドテーブルにあるはずのリモコンがそこにないのだ。 「あれ?」 疲れた頭で考える。今朝、ニュースを見ながら朝食... -
月曜日の家族
引っ越しから一週間が経った。 新しい生活を始めるために選んだのは、駅から徒歩15分ほどの静かな住宅街にある古いアパートだった。築年数は経っているが、内装はリフォーム済み。なによりも家賃が安く、一人暮らしにはぴったりだった。 「佐藤さん、こち...