怖い話– category –
投稿まとめ
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達筆の少女
秋風が校舎の窓を揺らす十月の午後、私たち書道部は文化祭の準備に追われていた。部室に並べられた作品を見回しながら、部長の田中が首をかしげる。 「おかしいな。作品が一つ多い」 私も含めて部員は十二人。しかし、展示予定の作品は十三点あった。余分... -
返却されなかったレンタルDVD
駅前の商店街の奥まった場所にある「ビデオマックス」は、今時珍しいレンタルビデオ店だった。高校三年生の俺、田中康介は、大学受験の資金稼ぎのためにここでアルバイトをしていた。店長の山田さんは六十代の温厚な男性で、DVDが主流になってからも頑なに... -
3年4組の席順
私立桜丘高等学校3年4組では、毎週月曜日に席替えが行われる。担任の田中先生が「新鮮な気持ちで一週間を始めるため」と言って始めたこの習慣も、もう一年以上続いていた。 しかし、3年4組には暗黙のルールがあった。教室の右側最後列、窓際から二番目の席... -
カーテンの向こう
真理が初めてそれに気づいたのは、秋の夜中だった。 午前三時頃、何かに呼び覚まされるように目を開けると、部屋の窓際で薄い水色のカーテンがゆっくりと揺れているのが見えた。窓は閉まっている。エアコンも止まっている。夜風が入り込む隙間もない。それ... -
😄だけのメッセージ
最初にそのメッセージを受け取ったのは、大学二年生の春だった。 深夜二時過ぎ、レポートの締切に追われて机に向かっていた僕のスマホが、チャットアプリ「LinkTalk」の通知音を鳴らした。見知らぬアカウントからのメッセージだった。プロフィール写真は真... -
子供部屋から聞こえる「おかえり
田中家が新築の家に引っ越してきたのは、桜の咲く頃だった。郊外の住宅地に建つ真新しい二階建ての家は、夫の健司と妻の美穂、そして五歳の娘である花音にとって念願のマイホームだった。共働きの夫婦にとって、健司の母親である祖母のタケ子が同居してく... -
石になったあの子
夕暮れの公園で、ハルキとマナは最後のかくれんぼをしていた。 「もういーかい?」 ハルキの声が、薄暗くなった公園に響く。返事はない。いつものように、マナは最高の隠れ場所を見つけたのだろう。ハルキは苦笑いを浮かべながら、公園の遊具を一つずつ調... -
笑う患者
私が総合病院の内科病棟で働き始めて三か月が経った頃のことだった。新人看護師としての慣れない業務に追われる日々の中で、一つだけ気になることがあった。 それは、夜勤の時間帯に聞こえる、奇妙な笑い声だった。 最初に気付いたのは、十月の肌寒い夜の... -
100円均一の”ひとつだけ”商品
雨に濡れた傘を振りながら、田中は最寄りの100円ショップに足を向けた。仕事帰りの金曜日、明日は休みだというのに気分は晴れなかった。同僚との些細な口論、上司からの理不尽な叱責、そして恋人からの別れ話。全てが重なって、彼の心は疲れ切っていた。 ... -
誰にも渡さない
新しいアパートに引っ越してから一週間が経った。築四十年の古い木造二階建てだが、家賃の安さと駅からの近さに惹かれて決めた。前の住人が置いていった家具も使えるものばかりで、特に寝室にあった古いタンスは重厚感があって気に入っていた。 その日、掃...