怖い話– category –
投稿まとめ
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誰もいないはずの2階
夜の九時を回った頃、美月は居間のソファにもたれかかりながら、お気に入りのバラエティ番組を見ていた。両親は温泉旅行で明日の夜まで帰らない。高校二年生の美月にとって、こうした一人の時間は貴重だった。普段なら母親に「もう寝なさい」と言われる時... -
先輩はまだグラウンドにいる
県立青山高校野球部の夜は長い。部活動の正式な時間が終わっても、レギュラーを狙う二年生の田中と山田は、毎晩のように校庭に残って自主練習を続けていた。 「今日もやるか」 「ああ、頼む」 秋の夜風が肌寒い十月のある日、いつものように二人はバッティ... -
訪問者は母の声
深夜二時を回った頃だった。田中雅人は仕事から帰ってきて、缶ビールを片手にテレビを眺めていた。三十五歳の独身男性、両親を相次いで亡くしてから一人暮らしが長い。父は五年前に心筋梗塞で、母は昨年の春に癌で他界した。 母の死後、雅人は実家を売り払... -
写ってはいけない集合写真
十月最後の日曜日、秋晴れの空の下で開催された桜丘高校の文化祭は、大成功で幕を閉じた。私たち2年B組は演劇部門で準優勝を果たし、皆で記念写真を撮ることになった。 「はい、もう少し詰めて!」 写真部の田中君がカメラを構えながら声をかける。体育館... -
深夜の手術室
夏の夜の蒸し暑さが、廃病院の前に立つ四人の大学生の肌にまとわりついていた。 「本当にここに入るの?」美咲が不安げに呟く。錆びついた看板には「聖和総合病院」と書かれているが、その文字は剥がれかけて不気味な影を作っていた。 「せっかく来たんだ... -
閉店後のレストラン
俊也は高校二年生になったばかりの春から、駅前の高級フレンチレストラン「ラ・ローズ」で皿洗いのアルバイトを始めた。家計を助けるため、そして将来の大学進学費用を貯めるためだった。 ラ・ローズは創業三十年を誇る老舗で、地元では知らない人はいない... -
消えない貼り紙
放課後の廊下は、いつもの喧騒が嘘のように静まり返っていた。部活動に参加していない私は、図書室で宿題を済ませた後、一人で校舎を歩いていた。夕日が窓から差し込み、長い影が床に伸びている。 三階の廊下を歩いていると、掲示板に見慣れない貼り紙が目... -
冷蔵庫のメモ
麻衣が会社から疲れ切って帰宅したのは、いつものように夜の十時を回っていた。IT企業の事務職として働く彼女にとって、残業は日常茶飯事だった。二十六歳になったばかりの麻衣は、両親の反対を押し切って一人暮らしを始めてから三年が経つ。築十五年のマ... -
駅の階段
「また、いるな」 田中拓海は毎朝六時十分発の電車に乗るため、新宿駅の南口改札を通り抜ける。運転士見習いとして働き始めてから半年、この時間帯はいつも決まった人々が行き交う。サラリーマン、学生、清掃員。みんな急ぎ足で階段を昇り降りしている。 ... -
消えたテントの仲間
夏休み最後の週末、私たち家族は奥多摩の湖畔キャンプ場で過ごしていた。父、母、私、そして小学校三年生の弟の大輝。都心の暑さから逃れるように選んだこの場所は、昼間でも涼しく、夜には肌寒いほどだった。 キャンプ場はそれほど大きくなく、湖に面した...