怖い話– category –
投稿まとめ
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消えた毛布
田中雄介は一人暮らしを始めてまだ半年だった。都内の1Kアパート、築20年ほどの古い建物だったが、家賃が安く、駅からも近いため迷わず決めた。隣人とのトラブルもなく、静かで住みやすい環境だと満足していた。 その夜も、いつものように午後11時頃にベッ... -
カーナビの案内
田中は新車を購入したばかりだった。最新型のAI搭載カーナビが自慢で、音声認識機能も完璧、渋滞回避ルートも秒で計算してくれる優れものだ。営業の仕事で毎日運転する彼にとって、これほど頼もしい相棒はいなかった。 その日も、いつものように顧客回りを... -
血圧計の謎
深夜二時、聖心総合病院の四階内科病棟は静寂に包まれていた。新人看護師の田中美咲は、入職してまだ三ヶ月という緊張感を胸に、夜勤の巡回業務を行っていた。廊下の蛍光灯が一本置きに消され、薄暗い通路を歩く足音だけが響いている。 美咲は患者のカルテ... -
排水口の髪
田中美咲は、実家を出てから三年目のワンルームマンションで一人暮らしをしていた。築十五年の古いマンションだが、家賃が安く、職場からのアクセスも良い。唯一の不満は、お風呂の排水口がすぐに髪の毛で詰まってしまうことだった。 美咲は腰まで届く長い... -
鏡の中の伴奏者
秋の夕方、桜ヶ丘高校の音楽室に響く美しい合唱の音色。しかし、その調べの奥には、誰も気づかない不協和音が潜んでいた。 「はい、もう一度。今度はもっと気持ちを込めて」 音楽教師の田中先生が指揮棒を振り上げる。放課後の合唱部練習は、いつものよう... -
砂場の足跡
残業が終わったのは午前1時を回っていた。会社の飲み会をすっぽかした代償として、上司が無理難題の仕事を押し付けてきたのだ。タイムカードを押し、オフィスビルを出ると、冷たい風が頬を撫でた。11月も中旬に差し掛かり、東京の夜は冬の気配を帯び始めて... -
亡き者からの手紙
最初の手紙が届いたのは、母の三回忌の日だった。 信じられないことだった。母の筆跡は間違いようがなく、私の名前「美咲」の「き」の字が少し傾いているのは、いつもの癖だった。宛名書きの角度、封筒の折り目の付け方、そして微かに漂うラベンダーの香り... -
消せないポップアップ
深夜の静寂を破るのは、キーボードを叩く音だけだった。高橋修平は会社の企画書の最終調整に没頭していた。締め切りまであと数時間。いつものように徹夜になりそうだ。 「あともう少しだけ...」 そう呟いた瞬間、画面の右下に小さなウィンドウが表示された... -
カルテに書かれた「×」
夜勤明けの疲れた瞳で、私は新たに渡されたカルテを眺めていた。研修医として赴任して三ヶ月、ようやく病院の空気に慣れてきたところだった。 「佐藤君、今日から担当してもらう患者さんだ」 循環器科の水野部長が差し出したのは、一般的なものとは少し異... -
深夜のセルフレジ
疲れ切った表情で、僕は深夜のコンビニに滑り込んだ。デジタル時計が「23:47」を指している。終電はとうに逃し、タクシー代を節約するために駅から自宅まで歩くことにした。その途中、少し腹が減ったので立ち寄ったのだ。 店内には僕以外に客はいない。レ...