怖い話– category –
投稿まとめ
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消せないポップアップ
深夜の静寂を破るのは、キーボードを叩く音だけだった。高橋修平は会社の企画書の最終調整に没頭していた。締め切りまであと数時間。いつものように徹夜になりそうだ。 「あともう少しだけ...」 そう呟いた瞬間、画面の右下に小さなウィンドウが表示された... -
カルテに書かれた「×」
夜勤明けの疲れた瞳で、私は新たに渡されたカルテを眺めていた。研修医として赴任して三ヶ月、ようやく病院の空気に慣れてきたところだった。 「佐藤君、今日から担当してもらう患者さんだ」 循環器科の水野部長が差し出したのは、一般的なものとは少し異... -
深夜のセルフレジ
疲れ切った表情で、僕は深夜のコンビニに滑り込んだ。デジタル時計が「23:47」を指している。終電はとうに逃し、タクシー代を節約するために駅から自宅まで歩くことにした。その途中、少し腹が減ったので立ち寄ったのだ。 店内には僕以外に客はいない。レ... -
放課後の鏡
紗季が最初に「放課後の鏡」の噂を聞いたのは、梅雨の終わりごろだった。うだるような暑さの中、放課後の教室に残っていた友人たちが小声でひそひそと語り合っていた。 「知ってる?三階の女子トイレの鏡のこと」と友人の美咲が言った。「放課後の六時十七... -
歩道橋の上の女
午後10時。私は毎日の帰宅ルートを歩いていた。この街れっきとした住宅街なのに、どこか不気味な雰囲気が漂う。特に、この古びた歩道橋は、夜になると余計に陰鬱な雰囲気を醸し出す。 最初に彼女に気づいたのは、二週間前のことだった。歩道橋の中央に、真... -
リモコンの場所
テレビのリモコンがない。 会社から帰宅して、いつもの習慣通りにソファに腰を下ろし、テレビをつけようとした瞬間、違和感に気づいた。サイドテーブルにあるはずのリモコンがそこにないのだ。 「あれ?」 疲れた頭で考える。今朝、ニュースを見ながら朝食... -
見てはいけない検索履歴
私がスマホの検索履歴に違和感を覚えたのは、ちょうど一ヶ月前の夜のことだった。 仕事から帰宅し、いつものようにベッドに寝転がって何気なくスマホを開いた。Twitterをスクロールし、YouTubeで適当な動画を見て、そして何かを調べようとブラウザを開いた... -
月曜日の家族
引っ越しから一週間が経った。 新しい生活を始めるために選んだのは、駅から徒歩15分ほどの静かな住宅街にある古いアパートだった。築年数は経っているが、内装はリフォーム済み。なによりも家賃が安く、一人暮らしにはぴったりだった。 「佐藤さん、こち... -
お客さん、もう降りてますよ?
深夜の東京。雨が降り始めていた。 俺は12時間目の運転の最中だった。このご時世、タクシー業界も厳しい。ダブルシフトを引き受け、明け方まで走るのは珍しくない。今夜も例外じゃなかった。 「あと一本だけ拾って帰ろう」 時計は午前2時15分を指していた... -
退院したはずの人
私は都内の大きな総合病院で夜勤の看護師として働いて5年目になる。病院の夜は独特の静けさがある。昼間は忙しく動き回る医師や看護師たちも少なくなり、面会客もいなくなる。そんな静寂の中、時折聞こえる患者さんの咳や寝返りの音が、妙に鮮明に響く。 ...