怖い話– category –
投稿まとめ
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鏡の中の訪問者
私は三ヶ月ぶりに髪を切りに行くことにした。いつも行く美容院は最寄り駅から少し離れた場所にある「Miroir(ミロワール)」という小さなお店だ。フランス語で「鏡」を意味する名前のとおり、店内には大きな鏡がたくさん設置されていて、どこにいても自分... -
存在しない部屋からの呼び出し
夜勤は私の専門だった。小さな町の市立病院では、夜勤専門の看護師は貴重な存在で、他のスタッフからは感謝されていた。日中は子育てに専念し、夜は病院で働く。この生活リズムにすっかり慣れていた。 あれは去年の秋、木々が色づき始めた頃のことだ。いつ... -
保存された運命
山田は新しい小説の執筆に没頭していた。「血の色をした夕焼け」というタイトルのミステリー小説だ。彼は昨年、同人誌でひそかに人気を博し、ついに商業デビューが決まったばかりだった。 「よし、今日も3000字は書けたな」 彼はクラウド保存機能付きのワ... -
おやすみの音
深夜二時。スマホの画面が青白く顔を照らす中、僕はSNSの投稿を眺めていた。明日は休日だからと、いつもより長く起きていたのだ。隣では妻が静かに寝息を立てている。 その時だった。 ピンポーン 玄関のチャイムが鳴った。 「こんな時間に…?」 僕は思わず... -
深夜の見舞い
夜も更けて、病室の消灯時間を過ぎていた。窓の外は真っ暗で、時折雨粒が窓ガラスを打つ音だけが静寂を破っていた。 私は二週間前から、原因不明の高熱で入院していた。四人部屋の一番奥のベッド。窓際の位置だ。他の患者は皆、年配の方ばかりで、すでに眠... -
消えない声
放課後の小学校は、昼間の賑わいが嘘のように静かだった。夕暮れの光が教室の窓から斜めに差し込み、床に伸びる長い影を作っていた。 「もう行くよ!皆隠れて!」 かくれんぼの鬼に選ばれた真希が、教室の黒板に向かって両手で目を覆い、大きな声でカウン... -
深夜コンビニの常連さん
バイトを始めて一週間が経った。深夜シフトは給料が良いと聞いて飛びついたものの、正直なところ、こんなに静かな時間帯があるとは思わなかった。午前2時を過ぎると、店内には私一人だけになることが多い。 そんな中、一人だけ気になる常連客がいた。 初め... -
幻の線路
「この近道を使えば、十分ほど早く着くよ」 同僚の村上がそう言ったのは、残業後の深夜十一時過ぎだった。最終電車に間に合うかどうかという瀬戸際で、彼の提案に乗ることにした。会社の裏手から伸びる細い道は、確かに駅までの距離を縮めるはずだった。 ... -
複写される影
残業が長引き、オフィスには私一人だけが残っていた。資料の作成が終わり、あとはクライアントへの提出書類をコピーするだけ。時計は午後11時を指していた。 普段なら昼間に済ませる作業だが、明日の朝一番のミーティングに間に合わせるには今夜中に終わら... -
綴られる髪
昼下がり、私は二階の自室から一階へ降りようとしていた。家の中は静まり返っていて、家族は全員外出中だった。 窓から差し込む陽の光が廊下を明るく照らしていた。普段なら何の気にもならない光景だが、その日は何かが違った。廊下の床に黒い糸のようなも...