怖い話– category –
投稿まとめ
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幽かな囁き
夕暮れ時、私は夕食の準備をしていた。両親は出張で不在、一人暮らしのような静けさが家に満ちていた。 窓から差し込む夕日が台所に長い影を作り出す頃、微かな音が聞こえた気がした。冷蔵庫の唸りか、水道管の音だろうと思い、包丁を握る手を止めなかった... -
消えた踏切
深夜の帰り道、いつも使う踏切を渡っていた。 時刻は午前2時を回っていた。会社の飲み会が長引いて、こんな時間になってしまった。普段なら絶対に使わない道だが、酔いが回って少しでも早く帰りたかった私は、近道の踏切を選んだ。 この踏切は昔から地元で... -
最後のお客様
夕方のスーパー「サンライズマート」は、帰宅途中の会社員や主婦で賑わう時間帯だった。私がレジ打ちを始めて3ヶ月。今日も定時の18時まであと30分を切り、ようやく客足が落ち着いてきた。 そろそろ来る時間だ。 毎日必ず夕方17時45分頃に来店する老婦人が... -
匿名掲示板の呼び声
私は2ちゃんねるのような匿名掲示板が好きだ。特に深夜、誰もいないはずの時間帯に現れる奇妙なスレッドが好きだった。 先月、いつものように深夜の掲示板を徘徊していたとき、「助けて下さい」というタイトルのスレッドを見つけた。オカルト板だったから... -
鏡に映った自分
朝の光が窓から差し込み、部屋を優しく照らし始めた頃、私は目を覚ました。平日の静かな朝。いつもなら急いで準備をする時間だが、今日は珍しく休みをもらっていた。 伸びをしながらベッドから出て、洗面所へと向かう。まだ少し眠たい目をこすりながら鏡の... -
白いカーテンの向こう
放課後の掃除当番を終え、校内が静まり返り始めた頃、僕は保健室に立っていた。体育の授業で捻挫した足首の包帯を交換するためだ。ノックしても返事がないので、おそるおそるドアを開けると、誰もいなかった。 「先生、いませんか?」 応答はない。夕日が... -
隣の席
私が配属された部署の隣の席は、いつも空いていた。 入社して三ヶ月、総務部の片隅に与えられた私の机の隣には、誰も座っていなかった。パソコンはあるし、筆記用具も置かれているのに、人の気配はない。 「あそこは佐藤さんの席です」と課長は言った。「... -
下からの気配
新居に引っ越して一週間が経った。一人暮らしを始めたマンションは築15年と少し古いが、家賃が手頃で間取りも気に入っていた。特に寝室は広く、前の住人が置いていったダブルサイズのベッドは、私の身体にぴったりと馴染んだ。 最初の数日は新しい環境の緊... -
8番線のホーム
私が転勤で通うようになった大崎駅は、7番線までしかないはずだった。 初日、駅の構内図を見ながら確認した。1番線から7番線まで、すべて把握した。しかし、出勤から一週間が過ぎた金曜日の夜、残業で疲れて帰る途中、駅の案内表示が目に入った。「8番線 -... -
最終改札
新築の一人暮らしを始めた私にとって、最寄り駅は徒歩15分の「月影駅」だった。都心からは少し離れているが、静かな環境が気に入っていた。 ある日、残業で終電間際に駅に着いた。改札を通ろうとすると、駅員が声をかけてきた。 「お客さん、今日はもう最...