学校で– category –
学校であった怖い話
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その本、誰が返したの?
九月の第一週、夏休み明けの図書室は静寂に包まれていた。司書の田中先生は、返却ボックスに入っている本を一冊ずつ取り出し、バーコードを読み取りながら返却処理を進めていた。 「あら?」 手に取った一冊の文庫本を見て、田中先生は首をかしげた。表紙... -
焼け焦げたラケット
私が中央高校のテニス部に入部したのは、四月の桜が散り始めた頃だった。部室は古い体育館の裏手にあり、その奥には更に古い倉庫が併設されている。先輩たちは皆優しく、新入部員の私にも丁寧に指導してくれた。 「倉庫の奥には古い道具がたくさんあるから... -
トロンボーンの棺
私立桜丘高校の吹奏楽部は、創部から五十年以上の歴史を誇る伝統ある部活動だった。部室の奥の楽器庫には、代々受け継がれてきた古い楽器たちが眠っている。その中でも特に目を引くのは、一番奥の暗がりに置かれた黒いトロンボーンケースだった。 三年生の... -
先輩はまだグラウンドにいる
県立青山高校野球部の夜は長い。部活動の正式な時間が終わっても、レギュラーを狙う二年生の田中と山田は、毎晩のように校庭に残って自主練習を続けていた。 「今日もやるか」 「ああ、頼む」 秋の夜風が肌寒い十月のある日、いつものように二人はバッティ... -
写ってはいけない集合写真
十月最後の日曜日、秋晴れの空の下で開催された桜丘高校の文化祭は、大成功で幕を閉じた。私たち2年B組は演劇部門で準優勝を果たし、皆で記念写真を撮ることになった。 「はい、もう少し詰めて!」 写真部の田中君がカメラを構えながら声をかける。体育館... -
消えない貼り紙
放課後の廊下は、いつもの喧騒が嘘のように静まり返っていた。部活動に参加していない私は、図書室で宿題を済ませた後、一人で校舎を歩いていた。夕日が窓から差し込み、長い影が床に伸びている。 三階の廊下を歩いていると、掲示板に見慣れない貼り紙が目... -
赤い絵の具
放課後の美術室に、かすかな夕日が差し込んでいた。廊下を行き交う生徒たちの声も遠ざかり、校舎全体が静寂に包まれ始める時間帯だった。 「もう少しで完成なんだけどな…」 三年生の山田咲は、イーゼルに立てかけたキャンバスを見つめながら、小さくため息... -
黒板の落書き
桜ヶ丘高校二年三組の教室に、最初の落書きが現れたのは五月の連休明けだった。 朝一番に教室に入った委員長の田中美咲は、黒板の右端に小さく書かれた文字を見つけて首をかしげた。 『佐藤は母親の薬を盗んでいる』 「何これ?」 美咲は眉をひそめた。佐... -
鏡の中の伴奏者
秋の夕方、桜ヶ丘高校の音楽室に響く美しい合唱の音色。しかし、その調べの奥には、誰も気づかない不協和音が潜んでいた。 「はい、もう一度。今度はもっと気持ちを込めて」 音楽教師の田中先生が指揮棒を振り上げる。放課後の合唱部練習は、いつものよう... -
放課後の鏡
紗季が最初に「放課後の鏡」の噂を聞いたのは、梅雨の終わりごろだった。うだるような暑さの中、放課後の教室に残っていた友人たちが小声でひそひそと語り合っていた。 「知ってる?三階の女子トイレの鏡のこと」と友人の美咲が言った。「放課後の六時十七...
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