お店で– category –
お店であった怖い話
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返却されなかったレンタルDVD
駅前の商店街の奥まった場所にある「ビデオマックス」は、今時珍しいレンタルビデオ店だった。高校三年生の俺、田中康介は、大学受験の資金稼ぎのためにここでアルバイトをしていた。店長の山田さんは六十代の温厚な男性で、DVDが主流になってからも頑なに... -
100円均一の”ひとつだけ”商品
雨に濡れた傘を振りながら、田中は最寄りの100円ショップに足を向けた。仕事帰りの金曜日、明日は休みだというのに気分は晴れなかった。同僚との些細な口論、上司からの理不尽な叱責、そして恋人からの別れ話。全てが重なって、彼の心は疲れ切っていた。 ... -
閉店後のレストラン
俊也は高校二年生になったばかりの春から、駅前の高級フレンチレストラン「ラ・ローズ」で皿洗いのアルバイトを始めた。家計を助けるため、そして将来の大学進学費用を貯めるためだった。 ラ・ローズは創業三十年を誇る老舗で、地元では知らない人はいない... -
マネキンの目
俺の名前は田中翔太。都内の私立高校に通う17歳で、放課後は駅前の老舗百貨店「西川デパート」でアルバイトをしている。担当は4階のレディースアパレル売り場だ。 西川デパートは創業50年を超える老舗で、建物も古く、夜になると妙に静まり返る。俺の仕事... -
深夜のセルフレジ
疲れ切った表情で、僕は深夜のコンビニに滑り込んだ。デジタル時計が「23:47」を指している。終電はとうに逃し、タクシー代を節約するために駅から自宅まで歩くことにした。その途中、少し腹が減ったので立ち寄ったのだ。 店内には僕以外に客はいない。レ... -
試供品のヘッドホン
電子機器の展示コーナーに立ち、私は何度目かの深呼吸をした。冷房の効いた空気が肺に入ると、緊張が少しだけ和らいだ。 「大丈夫ですか、鈴木さん?」 振り返ると、石田課長が心配そうな顔で私を見ていた。エスカレーターを降りてきた客がチラチラと私た... -
試着室の中
春野雪は「ミュゼ」という小さなセレクトショップで働きはじめて3ヶ月が経っていた。駅から少し離れた路地裏にある店は、客足は多くないが、センスの良い店長が選ぶ洋服は根強いファンがついていた。 その日は平日の午後、客はまばらだった。窓から差し込... -
鏡の中の訪問者
私は三ヶ月ぶりに髪を切りに行くことにした。いつも行く美容院は最寄り駅から少し離れた場所にある「Miroir(ミロワール)」という小さなお店だ。フランス語で「鏡」を意味する名前のとおり、店内には大きな鏡がたくさん設置されていて、どこにいても自分... -
深夜コンビニの常連さん
バイトを始めて一週間が経った。深夜シフトは給料が良いと聞いて飛びついたものの、正直なところ、こんなに静かな時間帯があるとは思わなかった。午前2時を過ぎると、店内には私一人だけになることが多い。 そんな中、一人だけ気になる常連客がいた。 初め... -
最後のお客様
夕方のスーパー「サンライズマート」は、帰宅途中の会社員や主婦で賑わう時間帯だった。私がレジ打ちを始めて3ヶ月。今日も定時の18時まであと30分を切り、ようやく客足が落ち着いてきた。 そろそろ来る時間だ。 毎日必ず夕方17時45分頃に来店する老婦人が...
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