乗り物で– category –
乗り物であった怖い話
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終バスの案内人
残業で疲れ果てた俺は、駅に向かう終バスの停留所で待っていた。時計は午後11時40分を指している。あと5分で最終便が来るはずだ。冬の夜風が頬を撫で、周囲には人影もまばらだった。 「これを逃したら歩くしかないか...」 溜息をつきながらスマホを見てい... -
お客さん、もう降りてますよ?
深夜の東京。雨が降り始めていた。 俺は12時間目の運転の最中だった。このご時世、タクシー業界も厳しい。ダブルシフトを引き受け、明け方まで走るのは珍しくない。今夜も例外じゃなかった。 「あと一本だけ拾って帰ろう」 時計は午前2時15分を指していた... -
バス停にいる女の子
雨の音が、夜のアスファルトを叩く。六月の梅雨時期、帰宅途中の会社員・田中清は、いつもの帰り道でバスを待っていた。夜勤明けの疲れた体に、冷たい雨粒が容赦なく降り注ぐ。傘を持っていたものの、強い風に煽られ、半身は既に濡れていた。 時刻は午前0... -
乗客のいない助手席
雨が激しく降る金曜の夜、私は残業を終えて疲れ切っていた。オフィスビルの玄関先で雨脚を眺めながら、タクシーアプリを開いた。普段なら電車で帰るところだが、この天気では濡れずに帰宅するのは不可能だった。幸い、アプリにはすぐ近くに車があると表示... -
終電の客
夜11時45分、最後の電車が駅に滑り込んできた。疲れ果てた俺は、空いている席に座り込んだ。窓の外は真っ暗で、自分の顔が薄っすらと映っている。 車内には他に3人しかいなかった。向かいの席には年配のサラリーマン、車両の端には学生らしき若者、そして... -
終わりなき道程
「もう三時間も同じ道を走っている」と佐藤は呟いた。助手席の妻・美香は眠ったままだ。後部座席では六歳の娘・陽菜が携帯ゲームに夢中になっている。 佐藤家の夏休み旅行は、順調なはずだった。朝早く東京を出発し、山梨の温泉宿に向かう予定だった。ナビ...
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