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深夜の見舞い
夜も更けて、病室の消灯時間を過ぎていた。窓の外は真っ暗で、時折雨粒が窓ガラスを打つ音だけが静寂を破っていた。 私は二週間前から、原因不明の高熱で入院していた。四人部屋の一番奥のベッド。窓際の位置だ。他の患者は皆、年配の方ばかりで、すでに眠... -
消えない声
放課後の小学校は、昼間の賑わいが嘘のように静かだった。夕暮れの光が教室の窓から斜めに差し込み、床に伸びる長い影を作っていた。 「もう行くよ!皆隠れて!」 かくれんぼの鬼に選ばれた真希が、教室の黒板に向かって両手で目を覆い、大きな声でカウン... -
深夜コンビニの常連さん
バイトを始めて一週間が経った。深夜シフトは給料が良いと聞いて飛びついたものの、正直なところ、こんなに静かな時間帯があるとは思わなかった。午前2時を過ぎると、店内には私一人だけになることが多い。 そんな中、一人だけ気になる常連客がいた。 初め... -
幻の線路
「この近道を使えば、十分ほど早く着くよ」 同僚の村上がそう言ったのは、残業後の深夜十一時過ぎだった。最終電車に間に合うかどうかという瀬戸際で、彼の提案に乗ることにした。会社の裏手から伸びる細い道は、確かに駅までの距離を縮めるはずだった。 ... -
複写される影
残業が長引き、オフィスには私一人だけが残っていた。資料の作成が終わり、あとはクライアントへの提出書類をコピーするだけ。時計は午後11時を指していた。 普段なら昼間に済ませる作業だが、明日の朝一番のミーティングに間に合わせるには今夜中に終わら... -
綴られる髪
昼下がり、私は二階の自室から一階へ降りようとしていた。家の中は静まり返っていて、家族は全員外出中だった。 窓から差し込む陽の光が廊下を明るく照らしていた。普段なら何の気にもならない光景だが、その日は何かが違った。廊下の床に黒い糸のようなも... -
幽かな囁き
夕暮れ時、私は夕食の準備をしていた。両親は出張で不在、一人暮らしのような静けさが家に満ちていた。 窓から差し込む夕日が台所に長い影を作り出す頃、微かな音が聞こえた気がした。冷蔵庫の唸りか、水道管の音だろうと思い、包丁を握る手を止めなかった... -
消えた踏切
深夜の帰り道、いつも使う踏切を渡っていた。 時刻は午前2時を回っていた。会社の飲み会が長引いて、こんな時間になってしまった。普段なら絶対に使わない道だが、酔いが回って少しでも早く帰りたかった私は、近道の踏切を選んだ。 この踏切は昔から地元で... -
最後のお客様
夕方のスーパー「サンライズマート」は、帰宅途中の会社員や主婦で賑わう時間帯だった。私がレジ打ちを始めて3ヶ月。今日も定時の18時まであと30分を切り、ようやく客足が落ち着いてきた。 そろそろ来る時間だ。 毎日必ず夕方17時45分頃に来店する老婦人が... -
匿名掲示板の呼び声
私は2ちゃんねるのような匿名掲示板が好きだ。特に深夜、誰もいないはずの時間帯に現れる奇妙なスレッドが好きだった。 先月、いつものように深夜の掲示板を徘徊していたとき、「助けて下さい」というタイトルのスレッドを見つけた。オカルト板だったから...